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HOME > 昆布と食文化 > 掲載記事の紹介/パリ昆布講演の旅


パリ『昆布講演の旅』 若狭「御食国」の機関誌 「かにかくに」2007年第5号 奥井海生堂  代表取締役 奥井 隆

 
  ある百貨店のご紹介を受けたフードジャーナリストが、突然弊社へご来店。なんとパリで昆布の講演会をとお誘いをいただきました。パリ在住の日本の方ですが、うかがうとパリは大変な日本食ブームで、ようやく国も、日本の食文化の海外でのまっとうな紹介に興味を持ち始めたとのことです。今回は、国際交流基金のバックアップのもとでの講演、しかも、海外での日本のPR活動の拠点である日本文化会館のなかでも最大規模のパリ文化エッフェル塔会館でお願いしますと、立て続けにお話されるのを遠くに感じながら、生来のパリへの憧れが熱き思いとして蘇ってきました。学生の頃からパリへの憧憬をいだき、今も年に一度は訪れるパリ。好きな美術館にレストラン、それに家内の買い物の付き合いにと、パターンは決まっています。それが今回は講演旅行。弾む気持を抑えながら、少し考えさせて下さいと格好をつけるのがやっとでした。  
  弊社は昆布を扱って百三十五年。私で四代目になります。昔から、若狭、敦賀は松前交易の拠点として、京、大坂の玄関口として栄えてきました。その名残で京、大坂の料亭とのお取引も沢山いただいております。一昨年たちあがった『日本料理アカデミー』の会長はじめ、多くの理事さんも弊社の大切な取引先です。その縁で、パリでの日本料理のプロモーションの話も度々うかがっていました。懐石料理が、単なる東洋の珍しい料理という範疇を飛び越え、まっとうに理解されるだけでなく、どんどん本場のフランス料理に影響を与えていること。私たち日本人より日本料理に詳しいフランス人シェフがいること。パリ日本文化会館での聴衆は、大変な日本びいきの方々が多いことも知りました。
 パリでは、昆布の「エキスパート」が来るということで、あちこちから多くの講演要請が来たそうです。日程の都合から、パリで三回、ブルターニュで一回と具体的なスケジュールも出てきました。  最初はパリへ行きたかっただけの軽い気持でしたが、徐々にプレッシャーを感じてきました。島国根性が頭をもたげてきました。日本人の恥になってはいけない。日本の代表として、なんて仰々しい考えがでてきました。やはり私たち団塊の世代は、まだまだコンプレックスの塊です。構えるのです。
 そんなこんなで準備の3ヶ月はあっという間に過ぎ、気楽な家内と二人でパリへとやってきました。家内は相変わらず買い物のことで頭がいっぱいのようです。それでも日本を代表してパリへやってきた私に時々優しく気遣いをしてくれ、なるようにしかならないからと私の気持をなだめてくれます。  幸いなことに、今回のパリ行きには、数社の企業の協賛をいただきました。現地のISSEという日本の方が社長をしていらっしゃる企業にも、パリでは大変お世話になりました。傘下の日本料理店の料理長さんや社員の方々も、一生懸命手伝ってくれました。東京で仕事をしているような錯覚をおぼえるほどに、私の要望どおりの会場設営、試食準備、通訳等への配慮をいただきました。パリでの三回の講演会は大成功でした(講演の模様は弊社サイト内にて紹介しております)。  
 東京には、フランスの有名なレストランがどんどん出店しています。パリと東京は毎日人々の行き来も盛んで、今更日本の昆布の紹介をしても興味を引かないのではと危惧していました。しかし、講演会に来ていただいた聴衆の方々は、そんな不安を吹き飛ばしてくれました。  ジャーナリストだけの講演会には、日本の大手新聞社のパリ支局長もご来場いただきました。NHKパリ支局の取材も受けました。皆さんが同じことを聞いてきました。私が、パリの日本料理店にプロモーションしに来たのかと思われたようです。
それが、昆布の歴史から始まり、ワインのような昆布の奥深い?世界、また日本料理のベースとして一番大切な昆布だしを、民族の文化遺産(少し大げさですが)として紹介したということで、何処か島国根性でヨーロッパに少々コンプレックスを持つ在パリのジャーナリストに喜んでいただけたようです。ヨーロッパの文化、芸術や伝統を習いに来る日本人の多い中で,奥井さんは一千年の食文化を持つ昆布を引っさげて真っ向勝負を仕掛けてきた、と喜んで、大手新聞のコラムで紹介された支局長もいらっしゃいました。コルドンブルーという有名な料理学校での講演では、日本からの留学生に一番大きな拍手をいただき、終わってから三十分も歓談を交わしました。  
 パリの美術館めぐりの好きな私は、後期印象派の有名な画家の作品に浮世絵が描かれていたり、間違いなくその影響を受けた作品を見るのが大好きです。百年も前に伊万里や瀬戸物をヨーロッパへ輸出していたとき、陶器が割れないように包んでいた紙に浮世絵がありました。ヨーロッパの芸術家はそれを見て驚嘆しました。浮世絵は、ヨーロッパで華々しく連綿と続く絵画の流れに、測り知れない影響を与えたのです。私たち日本人には珍しくもない様々な分野の文化が、海外で大きく評価され逆輸入されることが、今でも結構あるようです。
 
弊社も今回のパリ行きが一つのきっかけになり、少しずつですがパリへ昆布製品を輸出するようになりました。三ツ星の有名なシェフの何人かからも、業務用だし昆布の注文をいただくようになりました。パリで昆布を売り、マクロビオティックの食事療法が流行っているヨーロッパで昆布を紹介していただき、お洒落なヨーロッパの食品として日本へ逆輸入していただいたほうが、今の若い消費者へはインパクトがあるかなと考えています。昆布の消費拡大にはパリで拡販をと、声を大にして叫んだら、色々な業界の方々も手をあげてくれるんじゃないかなと密かに考えていますが、それって間違っていますか?



若狭「御食国」の機関誌 「かにかくに」2007年第5号より

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