「交易之品」
なんだかもったいぶったタイトルでごめんなさい。要するに「何を手に入れたいがために、いかなる交易をしてきたのか」を知る特集なんです。いつの時代も私たちは、欲しいモノ・欲しがるヒトがあればそこへ出かけてゆきました。私たちは縄文の昔から船を造り、航路を開拓し、時には政治を動かしながら壮大な「物々交換」をしてきたのです。世の中を動かすのは、良くも悪くも人間の限りなき物欲なんですね。そうしたモノの流れを追うなかで、経済が発展し、文化が伝播する過程が見えるのではないか―――そう考え、格好の例として取り上げたのが「昆布」。その交易ルートである「北前船」の寄港地を訪ね、昆布が産地の北海道から北陸を伝って、京都・大阪、そしてはるか沖縄まで運ばれたいきさつと、食文化として根ざしていったようすを探りました。
また昆布を専門に商う敦賀の「奥井海生堂」では、日仏の三ツ星料理人を唸らせる秘蔵の昆布を取材。ふだん何気なく口にしている昆布のすごさに目覚め、いっそう美味しく食べる、そういうお楽しみのある特集です。
<新刊案内より抜粋>